日本には「食べ残しを悪いことと考える」文化があります。
(食べ残し=食べ物を無駄にする=ご飯を捨てるとか)
多くの日本人はこれは人間として当然だと思っているし、
食べ物を粗末にするのは倫理的に問題があると思っています。
(コンビニや、飲食店では、事実として、日々膨大な量の食糧が捨てられていますが、それでも個人としては、多くの人が食べ物は無駄にするべきじゃないと考えています)
この「常識」は日本特有のものではありませんが、
1つ言えるのは、この常識が通用しない国もあるということです。
例えばアメリカではみんな平気で食べ物を捨てます。
理由は、聖書に「食べ物は粗末にしてはいけない」と書いていないからです・・・
というのは冗談ですが、
多くのアメリカ人は「お金を払えば、食べようが捨てようが個人の自由」
という考え方をするからです。
論理としては別にどこにもおかしいところはないですよね。
僕がアメリカで寮生活をしていたころ、
大学の食堂で食べ物を大量に捨てている学生を毎日のように見かけました。
アメリカの大学食堂はバイキング形式が普通(!)ですが、多くの人は食べ物を取り過ぎて、最後にはアメリカンサイズのゴミ箱にポイすることになるのです。
そんなに食べ物が捨てられたら食堂はコストで赤字になってしまうので、
大学側は考えた末、食堂の入口にメッセージボードを取りつけました。
そこにはこう書かれていました。
「あなたが毎日捨てる食糧には年間○○ドルもかかっているのです!」
これってすごいアメリカ的だなーと思いました。
日本だったらきっと、「食べ物を粗末にしないで!」だけで、こと足りるからです。
食べ物を粗末にすると何円無駄になるか、って書いたら
逆に説得力がなくなりますよね。
お金の問題かよっ、 みたいな。
じゃあアジアの国はどうかというと、タイでは食べ物をよく捨てます。
タイは世界一のお米の輸出国ということもあり、温暖な気候もありで
食べ物にはあんまり困る国ではないから、と言われています。
実際食べ物の物価は日本と比べたら激安で、1食200円でも過ごせます。
つまり、食べ物があんまり大事じゃないから、モッタイナイという感覚がないのです。
ここに、なぜ日本で「食べ残しが悪いこと」なのか、というヒントが隠されています。
日本では第2次世界大戦中や戦後、とても貧しい時代を生き延びてきました。
「蛍の墓」とかを見ればわかりますが、
そのころ食べ物は非常に貴重で、それを粗末にするなんて考えられなかったのです。
今、日本で「食べ物を粗末にするな」と言われるのにはそういう時代背景があったから。確かに、戦争時代を経験したお年寄りは絶対に食べ物を粗末にしないですよね。
その人たちに育てられた若者も、そういう考え方に影響されていると言えます。
そういう風に形作られた「空気」が文化なのです。
じゃあ、日本の年配者が言うように、食べ残しは本当に罪なのでしょうか?
ここで大事なのは、それも1つの考え方だ、と思うことです。
つまり、もしあなたが、
「食べ物を粗末にするやつはどうしようもないロクデナシだ!!」
と考えるなら、あなたはアメリカ人とタイ人の大多数を敵にまわしたも同然です。
本当に彼らはロクデナシでしょうか?
違いますよね。
それは「文化の違い」なのです。
食べ物を粗末にしてもいい、という文化は彼らにとっての「空気」なのです。
なので、食べ残しは罪か、という問いに対し、それは人によるとしか言えません。
ちなみに僕はこう考えています。
「食べ物は粗末にしてはいけない。
でも初めて口にする食べ物は(まずかった場合)捨ててもいい」
食べ物は無駄にしたくない。
でも、不意にどうしてもまずい料理を食べることになってしまった場合は
捨てるのも仕方ないと思っています。(失敗料理とか)
健康を悪くする可能性があるのに、無理してまで食べるのはおかしいでしょ。
文化は尊重するものであって、縛られるルールじゃないのです。