2011年1月25日火曜日

話す側・聞く側、悪いのはどっち?

英語には「Do you know what I mean?」という表現があります。
「私の言っていることがわかりますか?」という意味です。
英会話では最も基本のフレーズと言っていいほどで、
会話の途中で使い、話している相手が自分の言っていることをちゃんと理解できているか、話しについてきているか、を確認するために頻繁に使われます。

おもしろいのは、
こんな簡単で、頻繁に使いそうな表現が日本語にはないということです。

言えないことはないですが、日本語として使い方にとても困る表現なんです。
最も丁寧な言い方では「ご理解いただけましたでしょうか?」だと思いますが、
まだ使いにくい気がしませんか?

その理由は、
「理解できないあなたが悪いんだけど、わかりますか?」
と言っているように聞こえてしまうからなんです。

もちろんそんなつもりで聞いているわけではなく、
気を使って「言ってる意味わかる?」と聞いているだけなんですが、
そう聞かれたほうはバカにされているようで、どうもいい気分がしない。
そんなふうに聞くのは失礼だ、と感じる人もいるでしょう。
それは、そんなことを確認すること自体が、
日本語のコミュニケーション的にタブーだからです。

ある情報を相手に発信して、それが相手に理解されなかった場合、
それは発信した側の責任でしょうか?

ほとんどの方はそうだと思うでしょう。
相手が自分の言っていることを誤解した場合、
それは誤解されるようなことを言った自分が悪い。

ただ、この考え方はとても日本的だと思います。
同じ国で、同じ言葉を話し、同じ文化を共有する人達の中でなら、
この考え方は通用するでしょう。
ただ、ひとたび異質な人(例えば外国人)が入ってきた場合、
同じ情報でも、その人は普通の日本人とは全く違うとらえ方をする可能性があります。
外国人に限らず、日本がこれから向かっている多様化の社会では、同じ日本人の間でも頻繁に起こりうることです。

これと同じで、
欧米の国で英語を話す人達がDo you know what I mean?と頻繁に聞く理由は、
同じ情報でも、人によって本当に様々な解釈をされてしまう可能性があるからなんです。
だから、言ってる意味わかる?って頻繁に確認したほうが賢明だし、
そもそも誰も、情報の発信者に「万人に誤解のない表現」を期待しない。

ちなみに、日本人はこの「万人に誤解のない表現」が大好きです。
しかも、ビジネスの世界ではみんながそこを目指しています。
万人に語りかける政治の世界でも同じこと。

日本では、情報の発信者が「万人に誤解のない表現」をすることを求められる(むしろそれが当然なので)、「言ってる意味分かる?」と聞くことは失礼になってしまうのです。
つまり、「言ってる意味わかる?」って聞かなくても「わかる」言い方をしろ、ってことです。
でも、それは幻想に近いもの、だと思うのです。

分かり合えない理由は、話す側だけじゃなく、聞く側にもあるはずです。
そこを理解すれば、情報の発信者も少しは気分が楽になりそうですね。

2 件のコメント:

  1. 「チャック全開くん」より、以下のコメントが届いているので代わって掲載します。

    しかし日本人が話し手として万人にわかるコミュニケーションをめざすというのは分かるけど、そこまで話し手に責任を与えるかな?というのと、むしろアメリカがかなり特殊なんじゃ?例が極端だと思うけどどうかしら。

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  2. これにおいてはもうちょっとよく考えて、また書こうと思います。具体例をつけて。

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